派遣会社の担当者に読んでほしい本4選 | クロスラーニングのスタッフが選んだ本〈後編〉

2026/06/24

「まだ3ページしか読んでないけど、これは読みたい!」

そう言って笑ったのは、前編の冒頭で「本、読まないんです」と言い切った、あの森田さんです。
映画を観て面白かったから、原作も気になっている。読み終わっていないのに、誰かに話したくなる本との出会いは、それだけで価値があるのかもしれません。

この記事は、クロスラーニングの社員が選んだ本を紹介する企画の後編です。前編からの続きですが、ここから読んでも楽しめる内容になっています。

「まずは前編を読んでみたい」という方は、こちらからご覧ください!

後編で並ぶのは、詐欺師たちの物語、立場が入れ替わる切ないミステリ、漫画から「考える型」を学ぶビジネス書、そして休むことを科学する一冊。前編に負けず劣らずバラバラですが、やっぱりどこかで、派遣の教育担当の仕事に「ふっ」と効くヒントがにじんでいます。

肩の力を抜いて、読んでみてください。

お悩み別・まずはこの1冊

  • 寄せ集めのチームの力を引き出したい、つまずいた人に二度目のチャンスを
    森田さんの『カラスの親指』
  • 面談がいつも噛み合わない気がする山本さんの『秘密』
  • 研修や面談に物語の力を借りたい中野さんの『武器としての漫画思考』
  • 休んでも疲れが抜けない気がする須藤さんの『休養学』

まずは、選んだ4人を紹介します

本の前に、選んだ本人たちを少しだけご紹介します。

森田さん森田さん

前編の冒頭で「本、読まないんです」と言い切ったのが、この人です。活字はちょっと苦手。でも映画は大好きで、刺さった作品の話になると止まりません。正直で、まわりを和ませる存在。今回もいちばん意外な選書をしてくれました。

山本さん山本さん

ミステリ好き。読みながら犯人を推理して、伏線を見つけては「ここ、伏線だったか」とニヤニヤするタイプです。論理と仕掛けを味わうのが趣味。今回も、にやりと笑いながら推してくれました。

中野さん中野さん

漫画から学びを引っぱってくる人です。「これ、仕事に効くんですよ」と、熱量たっぷりに語ります。成長物語に弱い。物語の構造を真剣に分析するクセがあって、その視点が今回の選書にもよく出ています。

須藤さん須藤さん

実務寄りで、地に足のついた選書をする人です。「これは派遣の担当者さんにもおすすめできますよ」が口グセ。最近は「ちゃんと休むこと」に関心があるそうで、休養まわりの本を挙げてくれました。落ち着いた、頼れる存在です。


それでは、後編の4冊いってみましょう。

『カラスの親指』|森田さんのおすすめ

『カラスの親指』
『カラスの親指』道尾秀介・著/講談社/2008年
森田さん森田さん

「詐欺師の話なので、クロスラーニングに合うかはわからないんですけど(笑)。先に映画で観て、すごく面白かったんです。正直まだ3ページしか読めてないんですけど、でも読みたい!って気持ちだけは本物で。だから推させてください」

道尾秀介さんの詐欺師もの、いわゆるコン・ゲームの長編です。日本推理作家協会賞を受賞し、2012年には阿部寛さん主演で映画化もされました。クセのある人物たちが少しずつ関わり合いながら物語が進んでいくのですが、その先どうなるかは、もちろん内緒です。

結末も仕掛けもここには書きません。森田さんがそうだったように、映画から入っても、活字から入っても。気になった入口から、まっさらな気持ちで楽しんでほしい一冊です。

寄せ集めのチームにも、はまる役割がある

この物語に出てくるのは、最初から息の合った精鋭チームではありません。立場も事情もバラバラな人たちが、ひょんなことから一緒になり、それぞれの持ち味を持ち寄っていきます。完璧な誰かが一人で背負うのではなく、欠けたところを互いに補い合う。読んでいると、寄せ集めに見えた顔ぶれが、役割がはまった瞬間にぐっと一つになる手応えがあります。

これ、派遣スタッフのチーム編成を考えるときのヒントになります。配属の現場では、経歴も得意も性格もちがう人たちが、いきなり同じ持ち場で動くことが珍しくありません。つい「足りないところ」に目が行きがちですが、この本が思い出させてくれるのは逆の見方です。一人ひとりの持ち味を見立てて、はまる役割をそっと用意できれば、寄せ集めだったはずの面々が力を発揮しはじめる。

そしてもう一つ、登場人物たちが過去につまずいた人だからこそ描けるものがあります。一度どこかでうまくいかなかった人にも、配置と機会さえ合えば、二度目のちゃんとしたチャンスがある。来週、配属表を眺めるとき、空いた穴を埋める発想だけでなく「この人の持ち味が活きる持ち場はどこだろう」と一人分だけ見立て直してみる。それくらいの小さな一手から始められます。

『秘密』|山本さんのおすすめ

『秘密』
『秘密』東野圭吾・著/文藝春秋/1998年
山本さん山本さん

「立場が入れ替わると、見える世界がこんなに変わるのか、と。読み終わったあと、しばらく余韻から抜け出せませんでした。ミステリとしても切ない物語としても、両方おいしい一冊です」

日本推理作家協会賞を受賞した東野圭吾さんの代表作のひとつです。ある事故をきっかけに、家族のあいだで起きる「ありえないこと」を軸に物語が進みます。

謎解きの面白さと、登場人物の心の揺れが見事に絡み合っていて、読み手はずっと「もし自分だったら」と考えさせられます。詳しい筋書きは伏せますが、最後まで読むと、タイトルの『秘密』がじわっと効いてきます。

相手の景色を想像する

面談で「順調です」と返ってきたのに、後日ぜんぜん順調じゃなかったと知る。そんな経験はありませんか。この本のいちばんの読みどころは、「相手の立場に立つと景色が変わる」という体験です。頭ではわかっていても、実際に立場が入れ替わってみないと見えないものがある。それを物語として味わえるのが、この一冊の強みです。

教育の現場でも、同じことが言えます。面談で「最近どう?」と聞くとき、こちらの景色だけで話していないか。スタッフは派遣先で、私たちには見えない景色を毎日見ています。派遣先の担当者もまた、別の景色の中にいます。

相手がどんな世界を見ているのかを想像できると、面談の質はぐっと上がります。ロールプレイ研修で「相手の役」をやってみると、急に視界が開けることがありますが、あの感覚に近いかもしれません。面談の最後に「私の見えていないところで、困っていることはない?」と一言そえてみると、表に出てこなかった景色が見えてくることがあります。

『武器としての漫画思考』|中野さんのおすすめ

『武器としての漫画思考』
『武器としての漫画思考』保手濱彰人・著/PHP研究所/2023年
中野さん中野さん

「物語の構造って、ちゃんと分解すると仕事に使えるんですよ。漫画好きの趣味だと思ってたものが、急に武器になった感覚でした」

漫画やヒット作に共通する「物語の型」を解きほぐして、それを仕事や自己実現にどう使うかを語った一冊です。なぜ人は物語に引き込まれるのか。主人公の成長をどう描くと心が動くのか。そういった仕組みを、ビジネスの文脈で読み解いていきます。

中野さんが「漫画から学びを引く人」になった理由が、この本を読むとよくわかります。エンタメと実務をつなぐ、橋渡しのような本です。

物語を、教育の味方につける

この本は、ほとんどそのまま教育に応用できます。研修やマニュアルって、どうしても情報の羅列になりがちです。でも、そこに「物語」を一滴落とすと、ぐっと伝わるようになる。「なぜこの手順が必要なのか」を、誰かの体験談やビフォーアフターの物語として語るだけで、頭への残り方が変わります。

さらに踏み込むと、スタッフのキャリア面談、つまりキャリア形成の伴走にも使えます。一人ひとりのこれまでとこれからを、「主人公の成長物語」として一緒に描いてみる。「いまはこういう章にいて、次はこんな展開を目指しましょう」という語り方ができると、面談が単なる進捗確認ではなくなります。

たとえば面談で「この半年は基礎を固める序章でしたね。次の半年は、後輩に教える側にまわる第2章にしてみませんか」と語ってみると、相手のなかで次の一歩が物語になります。物語の力を、教育の味方につける。そんな発想をくれる本です。

『休養学』|須藤さんのおすすめ

『休養学』
『休養学』片野秀樹・著/東洋経済新報社/2024年
須藤さん須藤さん

「「ただ寝れば回復する」と思ってたんですけど、それだけじゃないんですよね。休むのにも技術がある。目からウロコでした」

「休養」を真正面から研究した、ちょっと珍しい切り口の本です。疲れを取るには、寝るだけでは足りない。体を動かす休み方、人とのつながりで満たす休み方など、いくつもの種類があるのだと教えてくれます。

なんとなくダラダラ過ごして、なぜか疲れが抜けなかった経験のある人なら、思い当たる節がたくさんあるはず。休むことを、ちゃんと学べる一冊です。

休養を、教育の設計に組み込む

これは研修の組み方にも応用が利きます。学習も仕事と同じで、走り続けるだけでは続きません。負荷に緩急をつけ、回復の余白を残しておくことで、受講のしんどさは大きく変わります。長く働ける職場をつくるうえで、「休養」は無視できないテーマです。無理をさせる教育計画は、短期的には進んでも、いつか反動が来ます。きちんと回復しながら走れる設計のほうが、結局は遠くまで行けます。

そして、これは支える側の話でもあります。教育担当は、人のことを気にかける仕事です。だからこそ、自分の疲れには気づきにくい。「休む技術」を知っておくことは、自分を守ることにもつながります。

スタッフのメンタルヘルスに目を配るためにも、まずは自分が上手に休めていること。須藤さんがこの本を「ちゃんと休もう」とやさしく背中を押してくれる一冊として挙げてくれました。

後編の4冊を並べてみて、思ったこと

詐欺師ものあり、切ないミステリあり、漫画のビジネス書あり、休養の科学あり。後編もやっぱりバラバラです。

でも、一冊ずつ向き合ってみると、ゆるやかに通じるものが見えてきました。寄せ集めのチームにも、はまる役割があること。相手の景色を想像すること。物語が人を動かすこと。そして、ちゃんと休むこと。前編と同じで、後編の4冊も、めぐりめぐって、どれも「人をどう育てて、どう長く力を発揮してもらうか」の話でした。

後編で並んだ4冊も、ジャンルはそれぞれ違います。けれど読み進めてみると、どの本にも「人がどう考え、どう動き、どう成長していくか」という視点がありました。

クロスラーニングで向き合っている教育も、知識を届けるだけでは終わりません。働く人が現場で迷わず動けること。派遣会社のみなさんが、スタッフ一人ひとりの成長を支えやすくなること。そのための小さなきっかけを、eラーニングという形で届けていく仕事だと思っています。

外国籍スタッフ向けの安全教育や生活ルールの講座、多言語での学習サポートも、その延長線上にあります。言葉や文化の壁を少しでも低くして、現場で働く人が安心して学べる環境をつくる。

そんな視点にも、今回の4冊はゆるやかにつながっているように感じました。なかでも安全教育は、現場の安心に直結する大切なテーマです。

本の話から少し遠くまで来ましたが、社員が選んだ一冊が、読んでくださった方の仕事や日々の考え方に、小さなヒントとして残ればうれしいです。

ちょっとした、よくある質問

Q後編だけ読んでも楽しめますか?
Aはい。前編を読んでいなくても楽しめる内容になっています。前編と同じ社員が選んだ本を紹介していますが、後編だけでもそれぞれの本の雰囲気や選んだ理由が伝わるようにしています。
Q紹介されている本は、仕事に直接関係する本だけですか?
Aいいえ。ビジネス書だけでなく、小説や漫画、休養に関する本も含まれています。直接的なノウハウというより、考え方を広げたり、少し肩の力を抜いたりするきっかけとして読める本を紹介しています。
Qクロスラーニングの講座づくりと、今回の本紹介にはどんな関係がありますか?
Aクロスラーニングでは、働く人が現場で学びやすくなることを大切にしています。今回紹介した本も、ジャンルは違いますが、人の成長や伝え方、休み方、考え方に触れる内容があり、教育やキャリア形成を考えるうえでのヒントにつながると感じています。
最初の4冊は〈前編〉から

前編では『愚か者の疾走』『十角館の殺人』『天は赤い河のほとり』
『世界の一流は「休日」に何をしているのか』の4冊を紹介しています。

学びの入口や思い込みの見直しにつながる選書です。

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