教育訓練のヒントや発見が見つかる本4選|クロスラーニングのスタッフおすすめ本〈前編〉

2026/06/17

「本、読まないんです」。

社内でそう言い切った人が、いました。しかも、いちばん最初に。

きっかけは、ちょっとした思いつきでした。「みんな、いま読みたい本ってある?」と社員に聞いてみたんです。何かテーマを決めたわけでもなく、ただ雑談のつもりで。

そうしたら、返ってきた答えがびっくりするほどバラバラでした。血なまぐさいノワール小説、伏線をたっぷり仕込んだミステリ、少女漫画、休み方の研究本。並べてみると統一感ゼロです。でも、それがやけに面白い。

私たちは派遣会社向けのeラーニングサービスを運営している会社です。普段は派遣スタッフのキャリアアップ教育訓練など人材育成を支援するオンライン教育を提供しています。

だからでしょうか。社員が選んだ本を眺めていると、不思議とどれも、派遣の教育担当の日々の仕事に「ふっ」と効きそうなヒントがにじんで見えてきました。

集まった本が思いのほか多かったので、この企画は4冊ずつ2回に分けて紹介します。これはその前編です。クロスラーニングの社員が選んだ本を、ひとりひとりの声と一緒にお届けします。

教育担当・人材開発担当として読むと「こういう視点もあるのか」と思えるヒントも、ちょっとだけ添えました。肩の力を抜いて、コーヒーでも片手に読んでもらえたら。

お悩み別・まずはこの1冊

  • 学びに前向きになれないスタッフがいる森田さんの『愚か者の疾走』
  • 思い込みや決めつけを見直したい山本さんの『十角館の殺人』
  • 未経験スタッフの受け入れに悩んでいる中野さんの『天は赤い河のほとり』
  • スタッフが疲れて見える、定着が不安須藤さんの『世界の一流は「休日」に何をしているのか』

まずは、選んだ4人を紹介します

本の前に、選んだ本人たちを少しだけご紹介します。

森田さん森田さん

冒頭で「本、読まないんです」と言い切ったのが、この人です。活字はちょっと苦手。でも映画は大好きで、刺さった作品の話になると止まりません。正直で、まわりを和ませる存在。今回もいちばん意外な選書をしてくれました。

山本さん山本さん

ミステリ好き。読みながら犯人を推理して、伏線を見つけては「ここ、伏線だったか」とニヤニヤするタイプです。論理と仕掛けを味わうのが趣味。今回も、にやりと笑いながら推してくれました。

中野さん中野さん

漫画から学びを引っぱってくる人です。「これ、仕事に効くんですよ」と、熱量たっぷりに語ります。成長物語に弱い。物語の構造を真剣に分析するクセがあって、その視点が今回の選書にもよく出ています。

須藤さん須藤さん

実務寄りで、地に足のついた選書をする人です。「これは派遣の担当者さんにもおすすめできますよ」が口グセ。最近は「ちゃんと休むこと」に関心があるそうで、休養まわりの本を挙げてくれました。落ち着いた、頼れる存在です。

それでは、いってみましょう。

『愚か者の疾走』|森田さんのおすすめ

『愚か者の疾走』
『愚か者の疾走』西尾潤・著/徳間書店/2025年
森田さん森田さん

「本は読まない私が「これだけは」って言える一冊です。先に映画を観たんですけど、切なすぎて。エンドロールが流れている間に、もう続きを小説で読みたくなってました」

映画化もされた『愚か者の身分』の続編にあたる小説です。原作は大藪春彦新人賞を受賞した作品で、ひりついた緊張感と、登場人物たちの行き場のなさが胸に残ります。森田さんいわく「ハッピーな話ではない。でも目が離せない」。

ふだんは活字を開かないあの森田さんが「これだけは」と言う。それだけで、ちょっと気になりませんか。活字が苦手な人でも、ページの先へ先へと引っぱっていく力がある一冊です。内容には触れません。ぜひまっさらな状態で読んでみてください。

学びの入口は、人それぞれでいい

ここで注目したいのは、本の中身そのものより、「本を読まない森田さんが、なぜ動き出したのか」のほうです。きっかけは映画でした。正論や「読むべき本リスト」ではなく、心が動く入口があったから、自然と次の一歩につながった。

これ、研修やeラーニングの設計にもそのまま当てはまります。学びに前向きになれないスタッフに、いきなり「これが大事だから受けてください」と正論を渡しても、なかなか届きません。それより、その人が「お、ちょっと気になるな」と思える入口をどう用意するか。

森田さんの「映画から入った」という体験は、学びの入口は人それぞれでいい、と教えてくれます。入口さえ合えば、活字が苦手な人だって動き出すんです。まずは雑談のなかで「最近おもしろかったもの、なんでもいいので教えて」と一つ聞いてみるだけでも、その人に合った入口が見えてきます。

『十角館の殺人』|山本さんのおすすめ

『十角館の殺人』
『十角館の殺人』綾辻行人・著/講談社/1987年
山本さん山本さん

「ある一行で、世界がぐるっと反転するんです。自分の思い込みを、こんなに気持ちよく裏切られたのは初めてでした。何度でも読み返したくなる一冊です」

新本格ミステリブームの起点になった、綾辻行人さんのデビュー作です。孤島に建つ奇妙な館を舞台に、物語が静かに、けれど確実に進んでいきます。

仕掛けの巧みさは語り草になっているほどで、ミステリ好きが「これは読んでおくべき」と口をそろえる一冊。山本さんが言う「あの一行」が何かは、もちろん内緒です。読んで、自分の目で確かめてほしい。

思い込みを、書類の上で疑う

「自分は思い込みなんてしていない」。そう思っている人ほど、この本にやられます。読者はずっと、ある前提を疑わずに読み進めます。そして、その前提が崩れたとき、初めて自分のバイアスに気づくんです。

教育担当の仕事にも、思い込みは静かに忍び込みます。やっかいなのは、それが書類の上にも残ること。情報の見せ方ひとつで印象が変わるのも、この本が教えてくれることです。

同じ内容でも、マニュアルや通知文の書き方次第で、受け取られ方はまるで違います。評価コメントも同じで、去年の評価コメントを今、先入観なしで読み直すと、同じ人を違う言葉で書けることがあります。自分の先入観が混ざっていないか、たまに立ち止まって疑ってみる。そのきっかけをくれる一冊です。

『天は赤い河のほとり』|中野さんのおすすめ

『天は赤い河のほとり』
『天は赤い河のほとり』篠原千絵・著/小学館/1995年
中野さん中野さん

「現代の普通の女の子が、いきなり古代の異世界に放り込まれるんです。最初は右も左もわからない。それが、まわりに鍛えられて、だんだん頼れる存在になっていく。読むたびに胸が熱くなります」

小学館漫画賞を受賞した、全28巻の少女漫画です。ある日突然、現代から古代の世界へタイムスリップしてしまった主人公が、慣れない環境で必死にもがきながら成長していく物語。

最初は守られるばかりだった彼女が、人と出会い、修羅場をくぐり、いつのまにか周りを引っぱる存在になっていく。その変化の積み重ねが、読んでいて気持ちいいんです。長い物語ですが、一気に読みたくなります。

環境が人を育てる

中野さんがこの漫画から引っぱってくるのは、「環境が人を育てる」という視点です。主人公は、最初から有能だったわけではありません。任され、ときに失敗し、周りに支えられながら伸びていきました。

これは、未経験者のオンボーディングそのものだと思いませんか。配属直後のスタッフは、まさに「異世界に放り込まれた」状態です。職場のルールも人間関係もわからない。日本語に不慣れなスタッフなら、その「異世界」感はなおさらかもしれません。

そこでいきなり放置すると、心が折れてしまいます。逆に、最初の修羅場にちゃんと伴走してあげると、人は驚くほど伸びる。OJTの設計、配属直後のフォロー、声のかけ方。この物語は、人が育つために何が必要かを、感情ごと教えてくれます。配属3日目あたりに5分だけ「ここまでで一番とまどったことは?」と聞く時間を取るだけでも、伴走している感は伝わります。

【篠原千絵画業45周年特設サイト】

『世界の一流は「休日」に何をしているのか』|須藤さんのおすすめ

『世界の一流は「休日」に何をしているのか』
『世界の一流は「休日」に何をしているのか』越川慎司・著/クロスメディア・パブリッシング/2024年
須藤さん須藤さん

「成果って、実は休み方で決まるんじゃないか。そう思わせてくれる本です。働く人を支える立場の、派遣の担当者さんにもおすすめできますよ」

成果を出し続ける人たちが、休日をどう過ごしているのかを掘り下げた一冊です。たくさんのデータをもとに、「ただ休む」のではなく「次につながる休み方」のヒントが詰まっています。

頑張ること自体は否定しない。でも、頑張り続けるためにこそ、休み方が大事なんだ、というメッセージが一貫しています。読み終わると、自分の週末をちょっと見直したくなります。

休み方が、定着を決める

金曜の夜、ぐったりしたまま週末に突入して、月曜にはもう疲れている。そんな経験、ありませんか。この本が照らしてくれるのは、「定着」と「燃え尽き防止」のテーマです。どんなに意欲の高いスタッフでも、休み方が下手だと、いつか息切れしてしまいます。逆に、オフの時間を上手に使える人は、長く力を発揮できる。

教育の文脈で言えば、たとえば休日に少しだけ学ぶスタッフを応援する仕組みや、ワークライフバランスを前提にした教育計画づくりにつながります。

それから、これは教育担当自身にも刺さる話です。スタッフのことばかり気にして、自分の休み方は後回しになっていないか。支える人こそ、ちゃんと休む。須藤さんがこの本を「担当者さんにも」とすすめる理由が、ここにあります。

前編の4冊を並べてみて、思ったこと

ノワール小説あり、新本格ミステリあり、少女漫画あり、休み方の本あり。最初に並べたときは「本当にバラバラだな」と笑ってしまいました。

でも、一冊ずつ向き合ってみると、ゆるやかに通じるものが見えてきました。学びの入口は人それぞれでいいこと。思い込みを疑うこと。環境が人を伸ばすこと。そして、ちゃんと休むこと。バラバラに見えた4冊は、めぐりめぐって、どれも「人をどう育てて、どう長く力を発揮してもらうか」の話でした。

私たちクロスラーニングがやっているのも、つまるところ同じ「人」の話です。派遣会社のみなさんが抱える「教育をどう回すか」「どう長く活躍してもらうか」に、eラーニングという形でそっと寄り添う。スタッフのキャリアアップ、つまりキャリア形成の後押しも、その延長線上にあります。育てることと、保つこと。その両方を支えるのが私たちの仕事です。

現場業務に役立つ講座は多言語にも対応していて、外国籍のスタッフにも案内しやすいのがクロスラーニングの強みです。たとえば外国籍スタッフの安全教育のような場面でも、言葉の壁をひとつ越える助けになればと思っています。

本の話から、ずいぶん遠くまで来ましたね。残りの4冊は後編で紹介します。詐欺師ものから切ないミステリ、漫画で考えるビジネス書、休養の科学まで。後編もどうぞお楽しみに。

ちょっとした、よくある質問

Q派遣の教育担当におすすめの本って、結局どれから読めばいいですか?
A順番に決まりはありません。前編の4冊なら、肩の力を抜きたい日は少女漫画やミステリから、仕事に直結させたい日は『世界の一流は「休日」に何をしているのか』から。気になった表紙の一冊で十分です。
Q本を読むのが苦手でも大丈夫ですか?
A森田さんがまさにそうでした。映画から入って小説にたどり着いたように、学びの入口は人それぞれ。無理に活字から入らなくていいんです。
Q教育担当の学びを、もっと仕組みにしたいときは?
Aeラーニングなど形にする手もあります。クロスラーニングでは派遣会社向けの講座をご用意していますので、いつでもお気軽にご相談ください。受講状況に応じたフォローについても、できる範囲でお手伝いします。実際の運用イメージを知りたい方は、ぜひ導入企業様の活用事例もあわせてのぞいてみてください。
続きの4冊は〈後編〉へ

後編では『カラスの親指』『秘密』『武器としての漫画思考』『休養学』の4冊を紹介しています。
チーム編成や面談、休み方のヒントにつながる選書です。

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ところで、あなたが「これだけは」と推したい一冊は何ですか。
仕事に効いた本でも、ただ好きな本でも構いません。
よかったら、そのタイトルだけでも教えてください。社員みんなで読ませていただきます。

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